鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学

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Department of Cardiovascular Medicine and Hypertension, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University

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留学生便り

バックナンバー(2013年)

国外

1. Cell Biology and Molecular Medicine, Rutgers University New Jersey Medical School
池田 義之

皆様ご無沙汰しております。平成8年入局の池田義之です。私は昨年の平成24年4月よりアメリカはNew Jersey州にあります,Rutgers University New Jersey Medical School (旧 University of Medicine and Dentistry of New Jersey)の佐渡島純一教授研究室に留学させていただき,虚血再灌流障害や心不全の発生機序,および老化の原因について,主にオートファジーに着目して研究をしています。オートファジーとは,細胞が持っている細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つです。加齢等により細胞内で増加する異常タンパク質を除去するアンチエイジング効果や,虚血性心臓病など細胞が栄養飢餓にさらされたときにタンパク質のリサイクルを行うことで飢餓に対抗するなど,様々な働きがあります。常に拍動し続ける臓器である心臓の主なエネルギーは,ミトコンドリアから産生されるATPです。また,ミトコンドリアは細胞の環境により融合して大きくなったり,分離して小さくなったりすることが知られています。これまでの研究では,心臓ではミトコンドリアは融合してそのサイズを大きくした方がエネルギー産生の増大が期待されるため心機能には良いとされ,近年心疾患に対してミトコンドリアを融合させる薬剤投与が試みられてきています。しかし,ミトコンドリアが融合し続けると,オートファジーによるミトコンドリア排除の低下を介して異常なミトコンドリアが蓄積し,心機能はむしろ低下し,虚血再灌流障害も進展するということを明らかにしました。現在これらのデータを論文にまとめており,近日中にsubmitするところです。

私は平成11年から平成14年まで,大学院生や部外研究生として,枇榔講師や鴨川先生のご指導のもと動脈硬化や心不全の勉強をさせていただき,基礎研究の礎と留学の夢を与えていただきました。その夢が実現できるまでに以降10年という時間が経過し,歳も40をとうに過ぎてからの留学となりましたが,渡米してから現在までの1年と半年の間に多くの手技を習得することができたうえに,様々な学会で発表をする機会を得られました。さらにAHAからは,Grant(Founders Affiliates: $106,000 / 2年間)やThe Best of AHA Specialty Conferences (Top-scoring Abstract of AHA Basic Cardiovascular Science) を授与されるなど,貴重な経験を積むことができました。

私は“Rotary Foundation Ambassadorial Scholar”としてこの留学生活を送らせていただいておりますが,この奨学生に選出していただくにあたり,田中弘允元鹿児島大学学長に大変お世話になりました。心から感謝申し上げます。また,このような留学の夢と基礎研究の礎を与えて下さった枇榔元講師,鴨川元医員,留学の推薦の労を取っていただきました鄭前教授,留学に際してお世話になりました宮田講師,才原元医局長,そして,留学の継続をご許可下さいました大石教授,桶谷前医局長,湯浅医局長をはじめとした鹿児島大学心臓血管・高血圧内科学医局の皆様方に,この場をお借りして御礼申し上げます。

2. Mayo Clinic, Cardiorenal Research Laboratory
市来 智子

ミネソタ州ロチェスターに留学させて頂き5年半となり,日本人留学生の中でもラボのフェローの中でもベテラン(?)グループに属するようになり,過ぎ去る年月をひしひしと感じております。遠くアメリカからとなりますが,改めて大石教授の教授御就任をお祝い申し上げますとともに,新たな心臓血管・高血圧内科学講座のスタートをお喜び申し上げます。

バーネットラボでは利尿ペプチドを中心とした神経内分泌因子の新薬開発,心腎連関のメカニズムと治療に関する研究を引き続き行っております。新薬の細胞実験,正常・もしくは心不全イヌを用いた新薬の効果判定,メイヨーの患者さんでのフェーズIの臨床治験,患者さんやイヌの組織を用いた基礎実験などをなんとかこなしております。今年は幸いAHAのグラントに合わせてメイヨー財団からのグラントも獲得できたので,資金面では困ることなく,逆にどう効率よく使い切るかに頭を悩ませるような贅沢な環境で仕事をさせていただいております。

今は実験の手法をフェローに教える立場になっておりますが,英語で学ぶよりも教える方が数段難しく,特に英語をあまり話せない外国人フェローが相手だと,わかったのかわからないのかもお互い全くわからない状態になることがあり,自分も最初はこうだったのかも・・・と反省しています。英語も日常生活の範囲内,新聞・ニュースも専門的なこと以外はだいたい理解できるようになりましたが,スピーキングに関してはまだまだゆっくりしか話せず,なんとか世間話がこなせる程度です。アメリカ心不全学会の委員会やAHAグラントのレビュー会議にも今年から参加させて頂いておりますが,電話会議なので,聞き取りも会話も自分には難しくて,私が話した後のみんなの反応に恐々としています。

こちらの冬は半年続きますが,春と夏は短いですがとても美しいです。みなさま,機会がありましたらミネソタ州,そしてこのメイヨークリニックにぜひお立ち寄りください。

最後になりますが,私を日本から支えて下さる大石教授,城ヶ崎先生並びに医局の皆様に厚く御礼を申し上げます。皆様の御健康と今後の医局の発展を心より祈念いたします。

3. Stanford University Division of Vascular Surgery
古庄 優子

皆様ご無沙汰しております。私は2013年4月より,アメリカカリフォルニア州スタンフォード大学血管外科に研究留学をしています。

スタンフォード大学は,サンフランシスコから南へ約70km,パロアルトという街にあります。気候もよく降灰もないため,大変過ごしやすいところです。シリコンバレーには,日本人や日系人も多いため日本食も手に入りやすく,住みやすい地域だと思いますが,1ベッドルームの家賃が平均27万円と,生活コストが高いのが難点です。

私が属するDalman Labでは,主に腹部大動脈瘤に関する基礎研究を行っています。大学院博士課程で動脈硬化についての研究を行っていましたが,これまでとは違った分野のテーマですので,知らないことも多く勉強の毎日です。

現在私は,BATF (Basic leucine zipper transcription factor, ATF-like) という転写因子が腹部動脈瘤や動脈硬化形成に及ぼす影響について研究しています。こちらの研究室は,腹部大動脈瘤モデルを用いた動物実験を行ってきた実績があり,モデル作成に携わる外科医や,基礎医学の研究者が在籍しているため,協力しながら研究に取り組むことが出来ます。また,小動物用MRIやPET,エコーなどの設備が整っているため,分子イメージングを実施するには最適な施設だと思います。

留学をするにあたり,お世話になりました医局の皆様には大変感謝しております。思ったように結果が出ない事に焦りを感じる事もありますが,現在の経験を鹿児島で活かせるよう,日々大切に過ごしたいと思います。