研修医の方へ:心臓血管・高血圧内科学の多彩な研修イメージ
成人先天性心疾患(ACHD: Adult Congenital Heart Disease)
先天性心疾患における外科手術・内科治療の向上により成人期をむかえる先天性心疾患患者が急増しています。外科手術・内科治療の向上により先天性心疾患患者の約9割は成人し、2007年の成人先天性心疾患患者数は40万人をこえて、その後も年間9000人のペースで増加している。これは主要心臓疾患である虚血性心疾患患者数の約半分にあたる患者数になります。2013年7月より当診療科でもこの状況に対応すべく、鹿児島大学病院に成人先天性心疾患専門外来を設立し、鹿児島県内外医療機関の小児科・内科より多数の成人先天性心疾患患者の紹介を受け、小児循環器から成人心臓血管内科への診療移行、包括的診療体制の確立に取り組んでいます。同時に成人先天性心疾患診療を担うことができる専門医の育成にも力をいれており、南九州一円から紹介をされる成人先天性心疾患患者の心エコー、心臓MRI、CTを中心にした画像診断、病態評価、さらに心臓カテーテル検査による血行動態の詳細な評価および手術適応・治療方針決定を指導医のもと研修していきます。
成人先天性心疾患には心房中隔欠損症や心室中隔欠損症のような単純先天性心疾患から、フォンタン手術後など小児期に複数回の段階的修復手術をうけている複雑先天性心疾患例まで様々な疾患があり、小児科で順調に経過した先天性心疾患患者も、成人期に入り遺残病変や続発症により新たに様々な問題を引き起こします(右心不全主体の心不全、弁膜症、低心拍出、難治性不整脈、チアノーゼ、肝硬変、蛋白漏出性胃腸症、血栓塞栓症など)。その特異的な解剖および循環動態により、従来の循環器疾患の概念と同様に解釈できない場面も多く、疾患ごとに病態把握、重症度評価、治療方針を検討して適切に疾患管理していく必要があります。最近では女性先天性心疾患患者の妊娠・出産も増加しており、産科と連携して周産期の循環評価、管理をする場面も多くなってきました。
このような成人先天性心疾患患者が生きていく上で、成人期におこってくる様々な点に対処すべく、専門知識や技術をもった専門医の育成を目標にしています。