鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学

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Department of Cardiovascular Medicine and Hypertension, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University

教育について

研修医の方へ:心臓血管・高血圧内科学の多彩な研修イメージ

弁膜症

ご存知の通り私たちの心臓には、通常、僧帽弁・大動脈弁・三尖弁・肺動脈弁といった、4つの弁があり、それぞれの弁は、一拍ごとに適切なタイミングで開放・閉鎖を絶え間なく繰り返し、一方向性の血液循環を維持しています。弁膜症(Valvular Heart Disease; VHD)とは、心臓の4つの弁のなかで一つ以上の弁が狭窄もしくは閉鎖不全に陥ることで生じる疾患です。VHD診療において重要なことは、どれぐらいの重症度か?、原因は何か?、VHDによる症状があるか?、どのタイミングで治療介入すべきか?、最適な治療手段はなにか?…です。

VHD診療における研修では、これらの臨床的問題点について適切に評価する能力を身につけることができます。また、VHD治療の進歩として経カテーテル的な弁膜症治療が新たな選択肢として広がりを見せており、当院でもTAVIをはじめ新規治療を積極的に導入を進めています。VHDの診療においても、他分野と同様に、日本循環器学会を始めとしたガイドラインが作成されており、実臨床でもガイドラインに沿って診断・治療方針を進めていきます。しかし実際には、ガイドラインの隙間に落ちてしまうような症例や、ガイドラインを越えて複雑な症例などにしばしば遭遇します。
しかも、治療上のジレンマに突き当たったとき、決断を迫られる状況もままあります。悩みながらも患者さんと共に、より良い方向を考えていかなければなりません。そうした時に、臨床家として積み上げられた知識・経験が真に生かすことができます。我々と一緒に、より良いVHD診療を目指して知識と経験を積み重ねましょう。

我々の施設では、機能性僧帽弁逆流について、世界に先駆けて、そのメカニズムを明らかにする研究を行ってきました。僧帽弁とは、どのような特徴のある弁でしょうか?
僧帽弁は便宜上、前尖・後尖と分かれていますが、大動脈弁のように明確な境界は実はありません。一枚のカーテン状の膜が弁輪に沿って垂れ下がり、平たい筒状の形態を成して、あたかも尻尾だけの鯉幟のような形をしています。そのような一見して頼りないように思える僧帽弁が、逆流を確実に制御し、体心室と一体となって一生涯の循環を支えています。不思議ですよね?
僧帽弁だけでも、左房拡大による心房性機能性僧帽弁逆流や心房中隔欠損術後の僧帽弁逆流の変化など、現在でも機序のはっきりしない病態が残されています。

弁膜症の研修を通して、弁機能の深淵を味わってみませんか?