医療関係者様へ:当科が専門的に行っている疾患・治療
経皮的左心耳閉鎖術(WATCHMAN留置術)
心房細動に関する大きな2つの問題点として、心房細動患者さんは洞調律の方と比較して、心不全リスクが4倍、脳梗塞リスクが5倍になることが報告されております。
心房細動による脳梗塞予防として、以前から抗凝固薬内服が広く行われており、抗凝固薬内服により脳梗塞発症率は6~7割減少することが証明されております。しかし、抗凝固薬の最も重要な副作用として出血があげられます。そのため、抗凝固薬により致死的な出血が生じる場合には、血栓塞栓症のリスクはあるものの、抗凝固薬の内服を中止せざるを得ません。
また、心房細動に伴う左房内血栓の90%は、左心耳に出来ると報告されております。
そこで、出血リスクが高くて抗凝固薬の内服継続が難しい血栓塞栓症リスクもある心房細動患者さんの抗凝固薬の代替治療として、経カテーテル的に専用のデバイス(WATCHMAN™)を使用して左心耳を閉鎖する手術(経皮的左心耳閉鎖術)が登場しました。(2019年9月に保険償還)
2021年3月に鹿児島大学病院も『手術施行施設』として日本循環器学会から認定されました。
現段階での適応
血栓塞栓症のリスクが高い心房細動患者さんのうち、以下の項目のうち1つ以上を含む、出血の危険性が高い患者さんが該当します。
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手術時間等について
手術時間:2~3時間程度、入院期間:1週間程度となります。
術中は経食道心エコーで左心耳の評価を行なう必要がありますので、全身麻酔下の手術となります。
術後の内服等について
抗血栓薬について
術後45日間 | 抗凝固薬(ワルファリン)と抗血小板薬(アスピリン)の併用 |
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外来受診 | 経食道心エコーにてデバイスへの血栓付着なければ、抗凝固薬を中止し、抗血小板薬を2剤に変更 |
6ヵ月後 | 抗血小板薬1剤へ減量し、その後は終生継続 |
抗凝固薬について
現段階の添付文書上は、ワルファリンに限定されておりますが、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の使用に関する報告も多く出されており、定期内服中のDOAC継続下の経皮的左心耳閉鎖術も増加してきております。
抗凝固薬を中止しても脳梗塞の頻度が抗凝固薬内服継続の場合と同等であり、抗凝固薬内服継続に伴う出血性副作用が減少するというのが、この治療の最大のメリットになります。
適応になりそうな症例・適応判断に迷われる症例がおられましたら、外来にて患者様に経皮的左心耳閉鎖術について説明させて頂きますので、是非御紹介頂けましたら幸いです。