医療関係者様へ:当科が専門的に行っている疾患・治療
緩和ケア
緩和ケアは、がんの終末期医療として行われてきましたが、近年、循環器疾患、特に、心不全に対しても行われるようになってきました。心不全患者は、さまざまな苦痛を抱えており、終末期に至る前の早期の段階から、患者・家族のQOL改善のためにも多職種チームによるサポートが重要と考えられています。また、さまざまなデバイスも開発され、本当の終末期になった場合に、その治療を中止するという選択肢も検討しなければなりませんが、その意思決定支援を行うことも緩和ケアの役割になります。心不全患者に対する緩和ケアはまだ歴史は浅いですが、心不全患者は益々増加すると予想され、今後、さらに必要な医療となると考えられます。
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について
緩和ケアのなかで、ACPをきちんと行うことが重要とされています。ACPとは、患者さん本人と家族が医療者や介護提供者などと一緒に、現在の病気だけでなく、意思決定能力が低下する場合に備えて、あらかじめ、終末期を含めた今後の医療や介護について話し合うことや、意思決定が出来なくなったときに備えて、本人に代わって意思決定をする人を決めておくプロセスを意味し(図)、終末期に至った際に納得した人生を送ってもらうことを目標とします。実施を考慮すべき時期としては、1年ごとの定期外来および入院後の臨床経過において再評価を促す節目となる出来事があった場合の退院前が推奨されています。ACPを行うことにより、終末期に至った際に、患者や家族が望まない侵襲的治療を避け、患者さんの意思に添った自分らしい生き方を推進し、満足度を高めることにつながります。
終末期心不全と緩和ケア
心不全は、がんとは異なり、急性増悪による入退院を繰り返しながら、最期は急速に悪化するため、終末期の判断がしばしば困難になります。2016年のESC ガイドラインでは、終末期ケア(end-of-life care)を要する症例として、表にあるような症例が挙げられています。終末期においては、身体的、心理的、社会的な苦痛が出現し、全人的苦痛を伴うといわれています。これらの苦痛を予防し、取り除くためには、さまざまな方向から多面的にアプローチをする必要があり、医師や看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど多職種によるチーム医療が重要になります。それぞれの専門性を発揮し、協働して患者診療にあたることで、患者のもつ全人的な苦痛の解決と質の高い緩和ケアの提供が可能になります。当院においては、緩和ケアチームと協力して心不全患者の緩和ケアにあたっています。