鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学

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Department of Cardiovascular Medicine and Hypertension, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University

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病棟医長より

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心臓血管内科病棟のこの一年(2013年)

病棟医長
髙﨑 州亜

今年2月に心臓血管・高血圧内科学分野に就任された大石充教授のもと,臨床部門としての心臓血管内科も新たなスタートを切りました。7月より前任の窪薗先生から私,髙﨑が病棟医長を引き継ぎ,病棟運営を担当させて頂いております。

これまでの外来・病棟診療の縦割り構造にとらわれず,すべての医局員が当科の臨床部門に深く関わっていくことが,大石教授のモットーです。毎週木曜日に開催している病棟症例カンファレンスは,原則医局員全員が参加し,入院患者の診断・治療方針の最終決定機関としての役割を明確にしました。新患だけではなく入院患者全員の症例提示を行い,重症患者や問題点を有する患者から優先順位をつけて,教授を中心に全員でじっくりと討論していく形式をとっています。処方薬一つ一つまで吟味して,教授からはその使い方から薬剤選択の根拠まで細やかな御指導を頂き,より質の高い診療へのモチベーションを維持する良い機会となっています。一方,教授回診はポリクリ学生・研修医・新入局医への教育的要素を高め,臨床教育的に重要な症例でのワンポイントアドバイスや聴診・理学所見のとり方・実技を織り交ぜながら,入院患者全員の回診を効率的に行っています。

病棟での診療体制は,虚血性心疾患・不整脈・肺高血圧・心不全の各グループがそれぞれの専門性を生かした診療を行いつつ,各種心疾患に対する包括的な循環器診療を行っています。

虚血性心疾患グループは内匠先生・神田先生・徳重先生が中心となって,冠動脈疾患の慢性閉塞性病変や左冠動脈主幹部病変などの難度の高い症例に対しても積極的に経皮的冠動脈形成術を行っています。また急性冠症候群に対しても随時受け入れ緊急治療を行っていますが,救命救急センターの本格稼働に合わせて更に充実したCCU体制の整備を進めているところです。

不整脈グループは,桶谷先生・奥井先生・入来先生・吉村先生(2月に大学に帰局)が中心となって,主に心房細動症例に対するアブレーション治療やICD・IRT-D植え込み術を精力的に行っており,特に心房細動に対するCFAEアブレーションは全国の医療機関からの見学者が絶えないほど注目されています。

肺高血圧グループは,窪田先生・肥後先生に宮永先生(今年4月に川内市民病院から大学に帰局)が新たに加わり,パワーアップしています。慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン肺動脈形成術を中心に,最近ではエルゴメーター負荷心臓カテーテル検査を用いて,境界レベルの肺高血圧症に対する診断・加療検討を試みています。

心不全グループは,窪薗先生・川添先生を中心に,心不全患者の鑑別診断・加療からCRT-D植え込み後の末期重症心不全患者のLVAD/心移植検討,CPXを用いた心臓リハビリテーション処方および実施,和温療法スタディ症例の加療・データ収集を継続中です。

今年4月から新入局員として新たな仲間に加わった毛利先生・野元先生・迫田先生は,いずれも身長だけではないビッグ・スリーであり,その綿密な診療と精力的な頑張りは特筆すべきものがあります。もはや現在の病棟診療のなかで欠かせない存在であり,研修医や学生への教育にも積極的に関わってくれており頼もしい限りです。来年2月から順次関連病院への出張に旅立って行きますが,いずれの先生達も各病院で更に磨きをかけてくれることと期待しています。

今年11月には,社会保険担当者からの個別指導という大きな試練がありました。前回の共同指導で2億円にも上る返戻金が生じたことを教訓に,今回は病院をあげての本格的な事前対策に取り組みました。度重なるシミュレーションでは指導官役と被審査役のドクター間に心理的嫌悪感を生むという弊害もありましたが,厳しい審査対策のおかげで大きな返戻金もなく無事乗り切ることができました。当科の審査対象は2症例でどちらも肥後先生が主治医という,彼の悪運の強さには本当に驚かされました。肥後先生はもはや執念ともいうべき綿密かつ完璧な準備で当日に備えてくれました。夏季休暇返上での頑張りには本当に頭が下がる思いです。悪運の強い肥後先生には申し訳ないですが,肥後先生だったからこそ乗り切れたと確信しています。本当にお疲れ様でした。

年末には,新病棟への移転という更に大きなイベントが待っております。移転当日の患者移送に加え,医師控室の移転など様々な懸案事項がありますが,何とか無事に完了できるよう万全の体制で臨むつもりです。移転後には,救急外来・ICUおよび心臓カテーテル検査室を含む各種検査室からの搬送時間の延長など,さらに検討すべき問題が残ると思われますが,病棟運営がスムーズに行えるよう関係各所との連携・交渉を続けていくことが重要と考えています。

病棟医が減少しているなか,前年と比べ新患患者数が月ベースで10例以上増加しており,病床稼働率も100%以上を維持し続けることができました。診療科別の診療報酬売上高も常に上位を維持しており,売上増加が期待できる診療科として重点強化診療科にも選ばれています。日夜頑張ってくれている病棟医の先生方・看護師の皆様には本当に感謝申し上げます。

また,このように大学病院での充実した病棟診療・教育が維持できるのも,日頃当科へご紹介頂いている関連病院・OBの先生方のご協力のお陰であります。心から感謝申し上げるとともに,今後ともご指導・ご鞭撻の程どうぞ宜しくお願い致します。

病棟患者様疾患内訳(2012年11月~2013年10月)

心臓血管内科入院患者数 628例

虚血 165例

不整脈 219例

上室性不整脈 167例
心室性不整脈 35例
徐脈性不整脈 17例

心不全/心筋症/心筋炎 95例

弁膜症 17例

大動脈疾患 12例

末梢動脈疾患 19例

肺動脈性肺高血圧症/肺塞栓症 59例

感染性心内膜炎 3例

先天性心疾患 4例

その他 35例