鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学

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Department of Cardiovascular Medicine and Hypertension, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University

診療について

医療関係者様へ:当科が専門的に行っている疾患・治療

医療関係者様向け

肺高血圧症

肺高血圧症について

肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の末梢の内腔が狭くなり、血液が通りにくくなることで肺動脈圧が高くなる病態の総称であり、スワンガンツカテーテルで測定される平均肺動脈圧が25mmHg以上と定義されています。

希少疾患であり、十数年前までほとんど有効な治療法がありませんでしたが、近年次々に新しい内服薬が登場し、それらを用いることで生存率の改善がみられています。

肺動脈圧が高くなると右心室に負荷がかかり、最終的には左心室が圧排されることで心拍出量が低下し心不全になります。また低酸素血症をきたすことで労作時息切れや易疲労感などの症状が出現します。基本的には進行性の疾患であり、早期に適切な治療をしなければ予後不良です。しかし、緩慢な進行の場合は自覚症状に乏しいことも多く、症状が顕在化する頃は重症化していることも少なくありません。

現在臨床で用いられている原因別の肺高血圧症の分類を表1に示しますが、このように肺高血圧症は様々な原因でおこります。従って適切な治療を行うためには原因を特定し加療を行う必要があり、当科では大学病院の特性を生かし、多岐にわたる原因に対応するために関連科と連携をとりながら原因検索及び治療に積極的に取り組んでいます。

その中でも、血栓塞栓症からの肺高血圧症(慢性血栓塞栓性肺高血圧症:4群)の根本的治療は外科的な血栓内膜摘除術とされてきましたが、肺動脈末梢のみに血栓があるタイプでは手術適応とならず、確固たる治療法がないままでした。そのような症例に対してカテーテルを使用し肺の血流を改善させる肺動脈バルーン拡張術(BPA)が2010年4月から保険で認可されました(図1)。十分な改善を得るには複数回のカテーテル治療と周術期の専門的な管理が必要ですが、当科でも2011年5月より治療を開始し、全例で良好な成績をおさめています。

2012年4月からは毎週月曜日に肺高血圧専門外来も開設し、ご紹介いただく症例は年々増加しています(図2)。

外来受診された患者様に肺高血圧症の疑いがある場合、精査のために5~7日程度の検査入院をおすすめしています。入院期間中にカテーテル検査による確定診断だけでなく、原因鑑別のための各種検査を効率よく施行し治療方針を決定しています。早期発見、早期治療介入が鍵となる疾患です。気になる症例がありましたらお気軽にご相談ください。