寄附講座のご案内
心血管病予防分析学講座
代表者ご挨拶
平成31年4月1日より社会医療法人義順顕彰会の御寄付により心血管病予防分析学寄付講座が発足しました。種子島をモデルとして先制医療の確立と健康寿命の延伸を目指した疫学研究(健康アイランド種子島)を遂行するための寄付講座です。種子島(29,428人;西之表市15,548人、中種子町8,135人、南種子町5,745人)は、鹿児島県にある数多くの離島のうち奄美大島に次ぐ人口を有します。さらに高齢化率は西之表市35.2%、中種子町35.8%、南種子町33.1%とJAXAがあるにもかかわらずかなり高齢化が進んでいます。また離島医療の大きな問題点として2次・3次救急医療の困難さがあげられますが、鹿児島市から100km以上離れている種子島ではドクターヘリや高速船といった救急輸送の手段が天候や時間(有視界飛行)に左右されます。従って種子島で3次救急まで完結できることが理想的ではありますが、マンパワーの確保や限られた医療資源の有効活用を考えると非現実的です。このように考えると、種子島島民の医療の充実に最も重要なことは救急医療体制を完璧にすることではなく、先制医療の確立(早期発見・早期治療を目指した健診の充実)と健康寿命の延伸(健康リテラシーの確立と生活習慣の改善)が最も重要であると考えられます。そのためには既存の健康診断(小中高校の学校健診、40-79歳の特定健診)を120%有効活用することが重要であると考えました。この取り組みにより19~39歳までの健診をどう考えるかという課題は残るものの、先制医療及び島民の健康リテラシー向上により、種子島島民の健康向上となるばかりか、医療費・介護保険の減少により自治体経営が安定化して、島民への経済還元にもつながると期待できます。
「健康アイランド種子島」では老若男女を問わず健康診断を毎年受診することにより、疾患の早期発見・早期治療を行う「先制医療」を実現し、これらを通して健康リテラシーの確立と生活習慣の改善による健康寿命の延伸を得ることを目的とします。この目的のために、全島民が健康診断を受診できる・したくなる環境を整備し、健康診断の内容を分かりやすい形でフィードバックし健康リテラシーを向上させて、健診データベースを構築・解析して保健指導や医療活動に役立てられるようにします。さらに産学連携を促進させて、近未来的な健康診断の形を模索・実現させるためのフィールドとして種子島を世界にアピールしたいと考えています。
本講座は特任講師1名(専任)客員准教授1名および教授1名(兼任)で構成されています。特任講師の川添晋医師は京都大学薬剤分析学分野(川上浩司教授)で2年間ビックデータやリアルワールドデータを用いた統計解析の研鑽を積んでおり、またもう1名の德重明央客員准教授は琉球大学臨床薬理学講座(植田真一郎教授)で3年間RCTや臨床疫学および臨床研究体制の確立などに関する研鑽を積んでおります。この2名を中心として、西之表市・中種子町・南種子町の全面協力を仰ぎながら、熊毛地区医師会および種子島医療センターと二人三脚で新しい健康リテラシー構築のために頑張っていきたいと考えております。
鹿児島大学 心臓血管・高血圧内科学 教授
心血管病予防分析学 教授
大石 充
寄附者
研究内容紹介
(1)研究名
健康アイランド種子島研究 ~先制医療の確立により健康寿命の延伸を目指す~
(2)背景
日本は他の先進諸国に先駆けて超高齢社会に突入し、やがて労働人口1名が高齢者1名を養わなければならない時代がやってくる。この時代に備えるためには健康寿命の延伸(健康リテラシーの確立と生活習慣の改善)が重要であり、その手法として先制医療の確立(早期発見・早期治療)が最も重要であると考えられている。しかし、健診の充実とその結果を活用した先制医療が、健康寿命の延伸につながるかどうかはまだ分かっておらず、この点を明らかにするコホート研究が必須である。
種子島は高齢化が進んでおり、人口移動が少なく、救急対応および入院治療が島内の病院で行われることが多いことから、疾患発症や治療の追跡を行いやすく、上記コホート研究に適した環境にある。
先制医療の充実により健康寿命の延伸を実現できるかという命題に対して、健診を通じて住民の健康状態を把握し、健康予後(疾患発症、介護状態や介護保険費)をアウトカムとするコホート調査を行う。小・中高校生を対象とする学校健診と、40歳以上の住民を対象とする特定健診の補填・有効利用をはかる。先制医療が健康リテラシーの向上に寄与し、島民の健康向上のきっかけとなることが期待される。結果として、医療費・介護保険料が減少し、自治体への経済還元につながる可能性もある。本研究を一つのモデルとして、将来高齢化が不可避であるわが国が進むべき道の指針となる情報を供出していく。
(3)目的
疾患の早期発見・早期治療を行う「先制医療」を実現し、近未来的な健康診断の形を模索・実現させる。これにより、健康リテラシーの向上と生活習慣の改善による健康寿命の延伸を得るモデルを確立する。
(4)方法・概略
小・中高校学校健診
一般社団法人健康・医療・教育情報評価推進機構(理事:京都大学大学院社会健康医学薬剤疫学分野 川上浩司教授)が運用しているシステムと連携し、健診データを匿名でお預かりする。生徒本人及び保護者に対して、自身の健診データと健康アドバイスを含むレポートを返却する。自治体には、全国平均との比較、学校間の比較、経年変化を可視化したレポートを還元する。
特定健診
未受診者への受診勧奨や、公開講座等の実施による受診モチベーションの向上をはかることで、健診受診率の向上を目指す。また、栄養調査、及び新たなバイオマーカーの探索的検査を行い、特定健診内容の向上をはかる。
データベース作成及び解析
健診データ、自治体からのデータ、医療機関データについてデータベース化を行う。
(1) | 脳卒中・透析導入・心不全およびアレルギー疾患、精神疾患発症等の心血管病以外疾患発症。 |
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(2) | 小・中高学校健診~特定健診を解析して地域特性を明らかにして健康行政・指導に生かす。 |
(3) | 特定健診受診が、住民の健康リテラシー向上を介して自治体機能に関連した指標に与える影響を評価する。 |
(5)メンバー紹介
- 大石 充
(心臓血管・高血圧内科学 教授 兼務)
(6)連絡先
鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学
〒890-8520 鹿児島市桜ヶ丘8丁目35番1号
TEL:099(275)5318
FAX:099(265)8447