鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学

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Department of Cardiovascular Medicine and Hypertension, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University

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教授ご挨拶

教授ご挨拶(バックナンバー)

2023年1月掲載

2023年は節目の年!
鹿児島大学 心臓血管・高血圧内科学
心血管病予防分析学
  教授 大石 充

2013年2月(49歳)より鹿児島大学にお世話になっている私としては、2023年は節目の年と言えます。就任10年となること、6月で還暦を迎えること、おそらく新型コロナが5類となり形式的には平穏を取り戻すだろうと予想されることなどとなります。65歳が定年ですので、2023年からはスポーツに例えるとついに終盤戦を迎えることになりました。就任以来、不十分ではありますが診療・教育・研究の種を撒いて、成長を期待していたところに新型コロナの世界的流行が起こりました。成長が止まったばかりか、new normalと呼ばれる新しい診療・教育・研究体制を再構築すべきなのか、それとも新型コロナが収まってくれて以前撒いた種が再び成長することを待った方がいいのか考えあぐねた数年でした。正直まだ答えは出ていませんが、少なくとも以前と全く同じ世界が見えるようになるとは思えません。ただ、あと5年強の在任期間を考えますと、短い時間でどこまでできるかわかりませんが、種から出てきた苗を大切に育てながら新しい世界に沿った方向へ誘導していく必要があるように感じています。

今年からの新たな取り組みは基礎研究の充実です。ここ10年は診療と教育の充実および鹿児島の土地柄を生かしたコホート研究や健診ビッグデータ解析などに力を入れてきましたが、基礎研究は佐渡嶋ラボから帰ってきた池田義之准教授におんぶにだっこの状態でした。ミトコンドリアダイナミクスを軸とした素晴らしい基礎研究を展開していますが、もう一つの柱が欲しいと考えていました。そんなことを考えている私のところにQueen Mary University of London, Professor of Translational Cardiovascular Researchの鈴木憲教授から国立循環器病研究センターに再生医療センターを作るんだけど、若手医師を研究者として派遣してくれないかというメールが来ました。彼は大学の同級生で、さらに桜橋渡辺病院でも私が循環器内科医として彼が心臓血管外科医として研鑽を積んだ仲でした。彼はその後、留学先のイギリスで頑張り、独力で今の地位を築いた私の人生の手本の一人であり、AHAなどで会うと昔話で盛り上がる間柄です。彼の専門は心筋の再生であり、ミトコンドリアダイナミクスと再生医療を両輪とするために二つ返事で快諾をし、今年4月から研究員を派遣することになっております。さらには鹿児島大学-国立循環器病研究センター連携大学院構想も雑談の中で出てきており、井戸章雄医歯学総合研究科長のご内諾を得て、現在準備を進めているところです。これらの取り組みが実を結び、私が退官の頃には基礎研究の苗もしっかりと育ってくれることを願っています。

2022年におこなった大きな取り組みはOK-ACS registryとKagoshima style 2022です。田中弘允教授の時代に鹿児島市CCUネットワークを作成していただいて、鹿児島市内の急性冠症候群(ACS)救命率は飛躍的に改善しましたが、鹿児島は離島・僻地が数多く存在することもあり、鹿児島県全体のACSの死亡率が他府県に比して高いことが大きな問題の一つです。この大きな問題を解決するためには鹿児島県全域のACS治療の実態把握が必要であるとの認識から、天陽会中央病院の加治屋崇先生と鹿児島大学病院の神田大輔先生が中心となって、OK-ACS (Optimal therapy for all Kagoshima Acute Coronary Syndrome) registryを企画し、当科・心血管病予防分析学講座の德重明央特任講師がプロトコールを作成してくれました。このregistryの最大の特徴は鹿児島県全域のACS救急対応施設が参加していただいていることであり、旧2内科の関連病院だけでなく、今まで大学との距離が少し遠かった徳洲会系や米盛病院なども快く本事業に参加していただいております。5月から登録が開始になりましたが、11月末現在で約300例と想定される症例の半分程度しか集まっておりません。しっかりとした症例登録をすることで鹿児島のACS診療の現実を把握して、鹿児島ACSの生命予後・健康予後を改善することが極めて重要なプロジェクトです。ご参加いただいている施設の皆様には大変面倒なお願いではありますが、しっかりと登録をしていただくように今後もお声がけをしていきたいと思っております。また、離島・僻地が多い鹿児島では予防が大切であろうという観点から、まずはACSの二次予防をしっかりとして行きたいと考えております。本来ならば全てのリスクをしっかりと管理をすることが大切なのですが、鹿児島県PCI施設にアンケートを取ったところ、ガイドラインで定められているLDLコレステロール<70mg/dLを達成できているのは50%未満であり、PCI施設とかかりつけ医が連携して、まずLDLコレステロール<70mg/dLだけを目指すKagoshima Style 2022を作成して各医師会の先生方に啓発を含めた勉強会をしています。これらの取り組みを通じて少しでも鹿児島県民の健康が担保できればと思っています。2023年は心不全と心原性脳塞栓にフォーカスを当てた新たな試みが始動します。HP上での続報に期待をしていただければと思います。

2022年の最も大きな出来事は開講記念会の再開かもしれません。新型コロナウイルス感染症で2年間開講記念会が中止となっていましたが、従来2月に行っている開講記念会を6月に延期して、3年間の新入医局員のお披露目も兼ねてハイブリッド形式で行いました。特別講演は第3代第一内科教授の金久卓也先生のご子息である京都大学特任教授金久實先生に遺伝子解析のお話をいただきました。金久卓也教授に薫陶を受けた医局員およびOBの先生方も大変多く、皆様目を輝かせてお話に聞き入っておられました。また、同門会から送られる素晴らしい研究に対する賞を「金久卓也賞」として、その栄誉を称えることになりました。それぞれの病院のレギュレーションもあり、全面的に会食をしながらの意見交換とはなりませんでしたが、皆様の親交を温める場にはなったのではないかと思っております。2023年は2月11日に開講記念会を予定しております。皆様にお目にかかれることを楽しみにしております。

さて、残り少ない終盤戦をどう戦うか?新型コロナの動向を見ながら戦略を練っている最中ですが、様々な仕掛けで新風を吹き込みながら、伝統を重んじて、全世界にアピールができる集団を作り上げることを夢見ております。