鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学

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Department of Cardiovascular Medicine and Hypertension, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University

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教授ご挨拶

教授ご挨拶(バックナンバー)

2022年7月掲載

光陰矢の如し -10年目の挑戦-
鹿児島大学 心臓血管・高血圧内科学
心血管病予防分析学
  教授 大石 充

短い梅雨が終わり例年以上の暑い夏がやってきました。暑さにも負けずにオミクロン株はくすぶり続けており、太古の昔から存在し続けていた微生物の強さを感じております。

さて、気が付けば鹿児島での10回目の夏を迎えることになりました。まさに『光陰矢の如し』です。鹿児島大学病院ではImpellaを導入し24時間365日、重症例にも対応できる循環器救急体制を確立しました。また昨年10月に心血管病低侵襲治療センターを設立して鹿児島ですべての循環器医療を受けられる体制を確立し、病院のご理解によりカテ室での全身麻酔管理システムとFFR-CT(冠動脈CTで虚血評価までできるシステム)も導入しました。最後の砦としての大学病院を地域の先生方がうまく利用していただいて、鹿児島県民の健康を守っていただければと思っております。

ここ数年で全世界の生活・経済・環境などが大きく変わってしまいました。連日、新型コロナウイルス感染者数が報道されて、感染増加が悪であるかの報道過熱が多くみられます。短期間で決着がついてしまうと思われていたロシアのウクライナ侵攻は泥沼化の様相を呈しています。さらには短い梅雨とそれに続く猛暑、そして急激に進む円安と、我々の住む世界はどうなってしまったんだろうと思わざるを得ない状況に陥っています。これらの現象を注視すると医療・医学の分野にも示唆に富む事柄が見えるような気がします。新型コロナのニュースでは一部のコメンテーターが述べた医学的な常識からずれた見解が拡散し、マスク・ワクチンなどの肯定派・否定派の論争がおこったりしていました。さらにこれが○○警察にまで発展するありさまでした。

激動の2年間で“情報”の重要性を再認識させられました。ウクライナの善戦は郷土を守りたい愛国心の賜物ではありますが、情報戦でロシアより優位に立っていることも大きなポイントです。一方で新型コロナウイルス感染症は発生初期から情報が錯綜し、ワクチンの有効性やウイルス防護のあり方などに関しても情報が混迷を極めていたと言えます。ウイルスが変異を続けている状況で、この新規感染症との戦いのゴールをどこに設定するのかに関しても議論と情報が錯綜しています。この2つの事例を見ても情報コントロール、情報戦略は非常に大切であることは明白です。我々の医療・医学の分野でも“情報”をどう扱うかは非常に重要な課題です。個人情報保護法の観点からオプトアウトの運用を厳しくしようという機運が高まっていますが、それだけでなく一般診療においても如何に効率かつ十分に患者さんからの情報を得ることができるかが重要ですが、ここにAIなどの技術が導入されてくるであろうと予測されます。しかし人間関係を築きながら、患者さんをよく観察して情報収集を行うことはAIには難しく、人間に優位性があるものと思っています。さらにチームが情報を共有することも非常に重要なポイントです。“ホウレンソウ”とよく言われますが、これは“情報の共有”と同義語と考えられます。これは医療だけでなく研究にも当てはまることで、さらには新しい情報を如何に効率よく取得して、自分のものにするのかも大きなポイントだと思っています。

今年も新型コロナに負けずに大きな飛躍をしたいと思っております。そのためにも“情報”と仲良く付き合って、うまくコントロールをしながら、診療も研究も大きなアウトプットを作っていきたいと思っています。