鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 心臓血管・高血圧内科学

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Department of Cardiovascular Medicine and Hypertension, Graduate School of Medical and Dental Sciences, Kagoshima University

講座について

教授ご挨拶

教授ご挨拶(バックナンバー)

2020年1月掲載

新しい時代-令和-に向かって一歩を踏み出す
心臓血管・高血圧内科学分野教授 大石 充

あけましておめでとうございます。新天皇の即位に伴って平成から令和へと元号が変わり2020年の東京オリンピックイヤーとなりました。昨年参加したアメリカ心臓病学会(AHA)では, TOPICSとして“artificial intelligence: AI”, “big data”, “deep learning” といった単語が会場内を席巻しており, 「本当に心臓病学会か?」と思わせるような雰囲気でした。発表内容も健診時の心電図よりAIの技術を用いて心房細動やACSの発症を予測するなど, 10年前には考えもしなかったことが現実として考えられえているようです。一方で, 痛風発作時の炎症・疼痛緩和に古くから用いられているコルヒチンが心筋梗塞後の予後改善効果があるというCOLCOT試験も発表されました。コルヒチンはIL-1βの産生・成熟を誘導するNLRP3インフラマソーム活性化阻害をすることにより強い抗炎症作用があるとされ, IL-1βの抗体医薬が虚血性心疾患に有効とされたCANTOS試験をうけて行われたRCTでした。目覚ましい技術革新が続いていく令和時代にどのように将来を担う医師を育てたらいいのだろうと日々悩んでいましたが, AHAでのこの2つの演題を聞いて霧が晴れたような気がしました。新しいことへの興味と挑戦を常に心がけることと症例をしっかりと診て基本に立ち返ること, この2つをしっかりと両立できる医師を育てればよいのだと。症例1つ1つを大事にして常に薬理・解剖・生理・生化・病理といった側面から病態を理解し, 病態に当てはまらないことや異常値には「何故」という興味を持って必ず解決をすることを若いころから心がけてきました。COLCOT試験はまさにこのような考え方を形にしたものであり, これからの若者にも伝えていかなくてはいけないものだと思っています。AI, deep learning, Big dataという言葉は耳にするものの, 本質を説明せよと言われてもなかなか難しいものです。しかしながら発表を聞いていると昔のSFが現実化しているように感じられ, 我々の持っている30万人分の厚生連健診データや3万ポイント以上測定されている垂水高血圧教室の血圧値などをSFの世界に引きずり込むことも可能なのではないかと考えるようになりました。

今年は「はぁと村」本格始動の年でもあります。昨年10月に鹿児島大学病院より車で25分くらいの農家(錫山中学校の近く)を買い取って, 医局員や鹿児島ハート倶楽部に賛同していただいた方々の憩いの場となればと思っております。11月には早速, 原木椎茸狩りを楽しみました。今月からリフォームに入り, 3月下旬にはリフォームが完成し, 4月中旬には外のBBQコーナーも完成予定です。医局員やその家族と芋掘り, 栗拾い, 餅つきなど, 近年忘れがちな季節感を次の世代に受け継ぎながら, 心のこもった医師を育成できればいいなぁと思っております。(実際は私が楽しみたいだけなのかもしれませんが・・・)医局員との椎茸狩りや栗拾いでは, どのようにしたらいいのかわからない人ばかりでちょっとびっくりしました。医療以上に自信を持って指導させていただきました。

令和時代の医療の在り方を考えた時に教室の運営方針をもう一度考え直さなくてはいけないと考えました。やはり原点に戻って, 「症例を大切に, 丁寧に観察して, 患者の全てを治すことを目指す」というスタンスが重要だと思います。朝カンファレンスや地方会の症例検討などでディスカッションが盛り上がるのをあまり見ないように思います。ディスカッションをするためには情熱もいるし, 知識も必要で, なによりも症例をしっかりと診ていないとできません。さらにその症例からの疑問を形にするような研究を組み立てていくことが大切であり, 決して「研究のための研究」をするべきでなはいと考えています。

そんなことから心臓血管・高血圧内科学の3本の柱を考えてみました。

  1. 1つ1つの症例を大切にしてベストを尽くす
  2. 全人医療で患者と地域を救う
    ‐not only disease and life, but also general and function
  3. 症例の「なぜ」を解決して患者と地域に還元

一つ一つは何を今更という内容だと思いますが, これを確実に身に着けることが令和時代に戦い抜ける医師を育てる最良の道であると考えています。わが臨床の師匠である故南野隆三先生が仰っていました。「1日に1つだけ新しいことを覚えなさい。そしてそれを毎日続けなさい。」と。私はとてもじゃないけど実行できていませんが, 若い学生や医師にも同じことを問い続けてみようと思います。