教授ご挨拶
教授ご挨拶(バックナンバー)
2014年9月掲載
鹿児島で2回目の夏が終わりました。今年はスコールのような豪雨や台風直撃など荒れた天気に翻弄されましたが、風向きや爆発回数の関係で降灰にはあまり悩まされることはありませんでした。私自身は、挨拶回りや医局員・鹿児島県医療関係の方々の把握などに汗を流しているうちに赴任して1年半が過ぎてしまったという印象で、教育・診療・研究という3本柱ともにまだ1合目にも満たないと反省しています。
そんな中でも大きな収穫がありました。人との出会いでした。地域で信頼される大学病院、学生や研修医にとって魅力ある大学病院を目指して、「24時間365日すべての循環器医療を鹿児島で完結する」をスローガンとして医局メンバーやコメディカルと日常診療に汗を流してきました。またその活動を少しでも分かっていただくために鹿児島市内のみならず鹿児島全県下(一部宮崎を含む)の医師会の皆様と顔の見える関係を作る病診連携の会「鹿児島循環器カンファレンス」を行って参りました。11月で行われる熊毛地区医師会を最後として、9月末でほぼすべての医師会の先生方とお目にかかることが出来ました。我々の6つの診療チームのうち2名のチームリーダーと私が各医師会にお邪魔して我々の診療内容のご説明と残り4名のチームリーダーのビデオレターをお届けしながら、懇親会では夜遅くまで症例ディスカッションなどで我々の活動を見える形で理解していただくことが出来ました。この病診連携の会を通して、患者さんのご紹介だけではなく、地域の先生方の医療への取り組みを教えていただくことが出来ました。まさに出会いを感じる瞬間でした。
またもう一つの出会いは5月に訪れました。皆様もご存じの通り旧ナンバーリング内科同士の切磋琢磨(確執?)は全国の大学で見られる現象です。ここ鹿児島の地でも旧一内科、旧二内科に循環器グループが存在して、それぞれの関連病院が独自の医療連携・人的交流を行っているという現状がありました。医療成長期にはこのシステムが非常に大きな効果を示したと思いますが、臓器別医療が推進されて医療成熟期とともに地域医療崩壊の危機を迎えた今日では、鹿児島のすべての循環器内科医が一致団結して、教育・診療・研究の3本柱の充実を図ることが急務であると考えていました。挨拶回りや研究会などを通じてこの考えをお伝えすると、皆様にご賛同を頂いて、5月22日に県下29施設が参加する若手循環器内科医育成のための「鹿児島循環器教育協議会」が発足しました。私個人のみならず当医局と旧二内科循環器グループとの出会いが生まれました。今後は心不全患者の診療・予後調査を行う「鹿児島心不全レジストリ(仮称)」もスタートさせることになっています。これらの活動を通じて、手と手を取り合いながら鹿児島循環器医療の教育・診療・研究の発展に寄与していけるのではないかと思っています。
私たちには「地域医療の最後の砦としての大学病院」という使命と責任があります。地域の先生方との出会いでそれが益々強く、大きなものとなりました。この使命と責任を感じることで医局員も一回り大きく成長してくれると期待しています。私の使命と責任は、この環境を途切れることなく未来へと受け継いでいくことだと思っています。そのためには地域最終基幹病院としての大学病院循環器医療の無理ない運営システムの構築とそれを担う若手医師の獲得・育成が必要だと思っています。私が後期高齢者になったとき、鹿児島での医療・研修を目指して若手医師が全国から集まってくるような環境になっていることを夢見て、自分が出来ることを精一杯努力することが「人との出会い」に報いる唯一の方策だと思っています。今後とも御指導・御協力よろしくお願いいたします。